雑談 県を越えた移動を制限するべきだとの意見について思うこと

ずいぶん前から、県をまたぐ移動を制限するべきだ(自粛するべきだ)との意見を耳にする。私は、この考え方には疑問を持っている。それは、雑談 県をまたぐ移動自粛に効果はあるのだろうかでも書いたとおりだ。


しかし、この移動制限の論に拍車をかけるような調査結果が出てきた。県を越えた移動をした歴のある人と、不明な人とでは他の人を感染させる割合が違うとのものだ。ごく一部を要約すると、以下のようなことだ。

  • 1月から8月に、自治体が移動歴を公表していたおよそ2万5千人あまりの感染者を調査
  • 県を越えた移動歴のある人が他の人に感染させた割合 : 25.2%
  • 県を越えた移動歴がないか不明な人が他の人に感染させた割合 : 21.8%

 

この調査を読んで、県を越えた移動を制限するべきだと騒いでいる人がいる。少し記事を読めないものだろうか。
まず、移動歴があるかどうかということであって、県を越えて移動したことが原因で感染させたかどうか、不明なこと。どこで感染したのか、どこで感染させたのか、その点ははっきりしていないし、恐らく明確になることもないだろう。
この調査結果の「25.2%」「21.8%」という数値が統計的に有意の差と呼べるレベルなのか、その点も見る人によって異なってくるだろう。私個人としては、調査期間や対象人数、割合の差、そのあたりから考えて、有意差と呼べるほどのものではないと感じている。


私個人の感覚としては有意差がないが、有意差があるとする視点で考えてみる。この調査結果で見るべきなのは、「県を越えた移動」で感染拡大するということではなく、「県を越えた移動をする人」が感染拡大の一因となるということである。実際、調査結果の報告でも「若い世代が移動を自粛する」ことが感染拡大防止につながると述べられているようだ。
つまり、「県を越えた移動をする人」が県を越えた移動を制限されたなら、自都道府県内で移動をし、自都道府県内で感染拡大をさせるだけだとの考えを持つべきであろう。県を越えた移動を制限する意義は、大きくないと思う。
移動することそのものが問題なのではなく、移動中や移動先でどのような行動をするのか、それが問題なのだと考えるべきではないだろうか。行動によるものなのだから、県を越えた移動かどうかが問題ではないはずだ。しかし、このような調査結果をきちんと読まない人のせいで、「県を越えた移動を制限するべきだ」と騒ぎ立てる風潮が強くなることが予想される。