日本の労働環境 マイナスの生産性とはどのようなものか

このブログの中で、マイナスの生産性という言葉を幾度か使っている。何もしないから居ても居なくてもいいというレベルではなく、邪魔なのだから居ないほうがいい、そういうレベルの人のことだ。このことについて知人と話していて、少し説明をしなければならなかったので、ここでも書いておきたい。


どのような人のことを指しているのか。どのような人を責めているのか。
私が責めているのは、ただの末端職員のことではなく、方針を決めたりする権限を与えられているにもかかわらず、必要な判断力や知見を持ち合わせていない人たちのことだ。つまり、役員や部長や課長であったり、政治家や中央省庁の官僚であったり、そういった立場の人を念頭に置いている。
末端職員であれば多少生産性が低かったとしても、それは影響範囲が限定される。しかし、権限を持っている人たちの場合は大きく異なってくる。彼らの判断次第で大きな差が生じてしまう。末端職員の影響度とは比較にならない。

旧日本軍について「下士官・兵は優秀、下級将校は普通、上級幹部は愚劣」と語られることがあるが、上級幹部の判断が誤ってしまえば取り返しがつかないのだ。「戦略の誤りは戦術でカバーできない」との言葉もよく耳にする通りで、権限者の判断というのは影響が非常に大きい。


例えば、今回の10万円の定額給付金問題を考えてみよう。システムのことをほんの少しでもわかっている者が制度設計に関与したのであれば、マイナンバーカードを利用した電子申請をさせようとはしなかったであろう。マイナンバーカードと戸籍情報が連動しておらず、大きな混乱が生じることは火を見るよりも明らかなのだから。
また、オリンピックに向けてサマータイム導入を議論していたことも記憶に新しい。日本国内ではサマータイム制が施行されていないため、日本国内で作られたシステムにはサマータイムの切替え機能を有したシステムなど存在しない。影響するシステムの洗い出しや改修を行うには膨大な時間と労力が必要であり、その労力は2000年問題への対処のときよりも大きい可能性すらあるのに、そのことを理解していない人たちが議論をしているのだ。
民間企業でも同様である。某コンビニチェーンのスマート決済システム、某銀行のシステム更改など、適切な判断力や知見を有していない者が権限を持ってしまったことの悲劇は数多い。
ここで少しだけ例を挙げたが、こんなことが頻繁に起こっている。無駄な仕事や混乱を生じさせたり、無駄な議論に時間を割かれたり、そういったものはマイナスの生産性の典型であろう。

会社内での役員や管理職の能力については過去にも事例を書いているが、これからも書いていきたいと思う。


また、一見まともな事業であるかのように見えて、実態としては何の価値も生み出していない、それどころか害悪とも思えるような事業すら存在すると考えている。それはまた次回。