雑談 十分な事業資金を貯めておかなかった企業が悪いという意見に思うこと

今回発令された緊急事態宣言の中で、休業を要請された事業がある。また、直接的には休業を要請されていなくとも、国民が不要不急の外出をしないように要請されているので、数多くの事業者が影響を受けている。
そのような社会環境の中、資金力の乏しい事業者が廃業していくことを余儀なくされたとの報道を目にすることがある。

廃業を余儀なくされた事業者に対して、一部には「事業資金を貯めておかなかった企業側に問題がある」旨の意見もあるようだが、大きな違和感がある。もう少しマクロ視点で考えるべきではないだろうか、という思いだ。


さて、事業資金を貯めておくためには企業が過去の時点においてどのような行動をとる必要があったのか。ここから考えなければならない。
事業資金を貯めておくということは、利益を確保し、それを使わないようにすることだ。
そのためには、まず人件費を削減しなければならない。人員を減らし、時給単価を下げるという圧力が社会全体で強まっていたであろう。
また、外部へ支払う費用も削減する動きも強くなっていたと思われる。現在でも原材料費や設備費などを少しでも削っているであろうが、削減圧力はもっと強かったはずだ。

企業は人件費を削るであろうことを述べたが、労働者側も同様に自己防衛行動をとるだろう。企業が人員を抑制することを目の当たりにしているので、雇用不安も生じるし、貯蓄に力を入れ、消費を控えるようになることも仕方がない。
ただ単に、どこかに貯まっているだけの、社会を回らないお金が増えていただけの結果が予想できる。企業も個人もお金を使わなくなった結果、さらにお金を使えなくなる状況という、デフレスパイラルが強まっていただけ。


つまり、多くの企業が「事業資金を貯めておいた」社会を想像してみると、それは現実の現在社会よりもデフレ圧力が強い社会だったと推測される。
逆の言い方をするならば、「事業資金を貯めておかなかった」企業は過去においてGDPに貢献してきたということができる。それらのお金を貯めてこなかった企業や個人のおかげで、GDPが何とか維持されてきたとの言い方もできる。


今回の政府の対応で、非常事態においても政府は「要請はするが支援は少しだけ」というスタンスをとっている。この結果として、自己防衛に走る企業や個人が増え、社会に回らないお金が増えていくことが懸念されてならない。