雑談 「高収入でも税金が高くてやる気をなくす」という意見に思うこと(その1)

高収入の人が、「税金や社会保障費が高すぎる」「これだけ国に持っていかれるとやる気をなくす」「高収入を目指すモチベーションが下がる」と意見を述べていることをよく目にする。
この、働く気や高収入を目指すモチベーション云々のことは彼らが述べているが、確かにその側面はあるだろう。
私は少し別の視点、高収入の人の負担を軽くするにはどのようにすればよいのか、高収入を目指すことがよいのか、この2点について述べてみたい。


まず1点目。高収入の人、彼ら自身が支払う税金を下げるためにはどのようにすべきなのか。
なぜ高収入の人たちが過剰に負担しなければならないのか、そこを考える必要があるだろう。低収入の人たちも負担しているが、すでに限界なのだ。これ以上の負担は無理なのだ。


税金負担を軽くする方法としてまず考えられるのは、他の人が税金や社会保障費を負担できるようにすること。つまり、現在低収入の人たちの収入を底上げし、負担できるようにするのだ。
そのためにはどうすればよいのか。低収入の人たちの多くは非正規労働や、中小零細企業の従業員である。彼らの収入を底上げしなければならない。
大企業の人たちは、自分たちの企業の利益を最大化するため、協力会社への支払いや人件費を極限まで下げるようにしている。人件費を下げるにあたっても、決定権のある人たち自身の影響は小さくなるように調整している。具体的には、非正規雇用などの人件費が一番最初に影響を受けてしまう。言い方を変えれば、大企業の利益、自分たちの高収入というのは、彼らのような社会的弱者へしわ寄せすることで得られているとも言える。もう少しはっきりと言えば、自分たちの高収入は低収入の人たちの犠牲の上に成り立っているのだという自覚を持つべきであろう。ある意味、低収入の人たちは税金とは別の形で既に負担しているのだ。ここを改めねばならない。

私生活においても、できるだけお金を使うようにすべきだろう。外食を増やしたり、いい食材は少し高くても買うようにすれば、飲食店や食材の生産者たちにお金が回るようになる。同様に、衣服の購入頻度を少し多くしたり、髪を切る頻度を少し高くしたり、本やCD・DVDを買ったり、映画館に行ったり、色んなところで少しずつでもお金を回していくことで、みんなの収入が底上げされていく。


低収入の人たちが税金や社会保障費を負担できるようになれば、結果として高収入の人たちが負担する割合は軽くなっていく。低収入の人たちの収入を底上げする分、高収入の人たちの収入は下がるだろうが、それは税引き前の総収入だ。負担が軽くなれば、税引き後の収入も少しは下がるだろうが、それほど多くは下がらないと思われる。


次に、行政に対して税金の無駄遣いを無くすように働きかける方法がある。
無駄遣いを本当にやめてくれるのであればコストは下がるが、実際問題としてどれほど効果があるか、疑問も残る。まず、行政から切り離して民間任せにする手段を採る、その可能性が考えられる。行政コストは下がるが、社会全体のコストは下がらないかもしれない。社会全体のコストが下がらなければ、結局は誰かが負担せねばならず、その多くは高収入の人たちの負担となるであろう。
そして、行政とのつながりで利益を維持している企業があることも無視できない。行政から発注される事業(あるいは補助金)をあてにしている企業もあるだろう。企業としては無駄を無くすように政府や自治体へ強く働きかけるのは難しいのではないだろうか。なにしろ、様々な業界が働きかけをする中で、「無駄を無くして欲しいけれど、自分の業界へは事業を発注して(補助金を回して)欲しい」とのスタンスも持っているだろうし、業界ごとの思惑も絡みあって簡単にはいかないだろう。行政との癒着で不当な利益を得ている企業は論外だが、正当な業務の対価として利益を得ている企業もあるのだ。


続いて2点目、高収入を目指すことがよいのかであるが、これは雑談 「高収入でも税金が高くてやる気をなくす」という意見に思うこと(その2)に回したいと思う。