日本の労働環境 間違ったコスト削減

会社内で、様々なコスト削減への取り組みに励んでいることだろう。ただ、誤ったコスト削減により、実際にはコストが上がってしまっている事例も目にする。もう少し考えるべきだろう。

いくつか例を挙げよう。
これから暑くなってくるので、オフィス内では冷房を使用するだろう。その冷房運転で、設定温度を28度にしている会社も多いと聞く。設定温度が28度ということは、デスク周りでは30度を超えているはずだ。30度では頭もろくに回らず、集中力も低下し、業務効率は大きく下がってしまう。業務効率が下がるということは、当然人件費として反映される。オフィスの温度を28度にするということが、誤って(あるいは意図的に)設定温度のことだと認識されている。そもそも、28度が適正かどうか、根拠自体も怪しいところだが。

これもよく見られたものだが、コピー機での裏紙利用、というものがある。最近は減っているだろうか?裏紙をコピー機で利用すると、紙詰まりなどが起きやすく、故障の原因ともなる。このことは多くの人が知っていながら、なぜか社内では推奨する意見が見受けられた。コピー用紙の購入金額を削減できる分より、用紙詰まりや故障の対応にかかるコストの方が大きいだろう。つまり、コストは上がっていると考えた方がいい。コピー用紙代を削減する目的なのだろうが、そうであれば、コピーそのものを削減すべきだ。

次に、小額のものでも複数社からの相見積もりを比較検討する、ということがルール化されている会社も多いだろう。これも割と非効率だ。例えば、数千円、数万円程度の価格のものであれば、どこから購入したとしても千円も差がないことも多いだろう。一方、人件費は1時間当たり2千円を下回らない。複数社へ見積もりを依頼し、取り付けた見積もりを比較して資料を作り、その結果を上長へ報告して承認を得る、などプロセスを考えると、人件費の方が高くついてしまう。しかし、このようなことをやっている例は非常に多い。

最後に、システム導入での事例を挙げよう。とある会社が、事務効率を上げるため、システム導入を考えた。しかし、見積もり金額が想像したよりも高かったため、機能を削って導入することにした。当然、機能を削減する部分については自動化が出来ないので、人間が対応することになる。これでは、目指していた効果も生み出せるわけがない。
金額自体はフェイクであるが、実際に以下のような事例があった。当初の見積もり金額が1千万円だったが、それでは高いと感じ、機能削減などで5百万円まで導入費用を下げることができた。しかし、機能を削った結果、当初考えたシステムの2割以下の効果しか生み出せなかった。導入費用を半分にした結果、効果が2割以下になったのだ。導入費用にばかり意識が向いてしまい、運用開始後に手間がかかってしまうことを是認してしまったことの誤りであろう。

このように、目に見えやすいコスト、目先のコストの削減にばかり目が行ってしまうと、全体のコストに考えが及ばなくなる。小さなコスト削減というのは、自分の身の回りのことだから目に付きやすく、対処も容易だというのは分かる。しかし、全体視点で、より大きなコスト削減にこそ目を向けるべきだろう。