日本の労働環境 どうすべきなのか その7

ブラック企業と同様、社会悪となっているのが「現在の」非正規雇用だ。非正規雇用は、正規雇用に比べて著しく冷遇されている。このことが、人材の流動化を妨げている一因でもある。
正規雇用から一度踏み外してしまうと、それ以降正規雇用に戻ることは難しい。待遇の悪い非正規雇用として生きていくことしか出来なくなる。それゆえ、どれほど自分の適性と合わない仕事であっても、会社にしがみつくという生き方になる。
現実、非正規雇用になりたくないがために、ブラック企業正規雇用に留まっている人も相当多くいるだろう。ブラック企業であっても、非正規雇用よりはましだ、と思っているのか。

解雇規制緩和という手法ではなく、正規・非正規という雇用形態の面から考えて、人材の流動化を高めることも不可能ではない。非正規雇用の賃金を、正規雇用より優遇することだ。とは言え、正規雇用の給与を下げることは難しいし、会社として支払える人件費の総額は変えられない。正規雇用の月々の給与は据え置き、賞与を引き下げ、少しずつ非正規の賃金を上げていけば、いずれは逆転できなくはない。可能ではあるが、数年程度で逆転できるほどの賃金差でもないだろう。10年以上前にこの方策に手をつけていればなあ、という思いもある。
もし非正規雇用の賃金が正規雇用よりも高くなれば、自ら契約社員などの非正規雇用を希望する人も出てくるだろう。非正規雇用であれば、会社側としては人員調整がやりやすくなる。
ただ、非正規雇用の賃金を上げていくのは現実的には難しいだろう。非正規雇用の賃金を決めているのは正規雇用側の社員であり、自分たちの収入を下げ、それを非正規雇用にまわすという考え方を持つことは出来ない。
正規雇用の賃金がよくなったとして、非正規転換を望む人員は、他でもやっていける自信を持っている人だろうという推測も出来る。つまり、その会社でしかやって行けない人が正規雇用社員として残り続け、他でもやって行ける人が居なくなってしまうのだ。その状況は、会社としては困ってしまうかな。

現在、非正規雇用の人たちに対して「無能だから」「努力してこなかったから」とかいう意見を目にすることがある。もし、非正規雇用の賃金が高くなり転職市場も大きくなったとして、そのような意見を言ってる人たちの内、どの程度の人が非正規の道を選ぶだろうか。少し楽しみである。自分は優秀だから正規雇用なのだ、というロジックであれば、全員が非正規になるはずだが。
まあ、転職市場が十分大きくなったときには、「優秀な人材」の定義が変わっているだろうけど。新卒一括採用における優秀な人材の定義、就活テクニックの高い人などは市場価値が高い気がしない。