日本の労働環境 どうすべきなのか その8

ブラック企業は淘汰されるべきだ、と書いた。これは本当にそう思っている。
勿論、よいことばかりが起こるわけではない。まず、ブラックな環境を強いることで原価を下げ、それで価格競争力を維持している仕事そのものがなくなる可能性がある、ということだ。
価格以外に優位性がないものについては、人件費の安い海外製品と競争できなくなる可能性が考えられる。何も手を打たないのであれば、多くの製造業が消えてしまうこともあり得る。
まずできることは、適性のない職に就いている人を、適性の高い職に配置転換することだ。この配置転換は、社内だけではなく社会全体で見ていく必要がある。転職も促進するということだ。
配置転換では、役職の高い人から着手すべきだ。役員、部長、課長など、影響の度合いが大きい人ほど入れ替わる効果も大きい。
ただ、役員たちが自分自身をきちんと評価できればいいのだけれど、やはり相当に難しいだろうなあ。また、部長や課長たちに「適性なし」と言えるかどうかも疑問はある。日本的組織特有の、「人的ネットワーク重視」「情緒的」という「空気」の中で言えるだろうか、という問題である。
以前も紹介した、「失敗の本質 -日本軍の組織論的研究-」(中央公論新社)を読んでいただければと思う。ノモンハン事件で作戦を指揮した軍参謀が、後に参謀本部ガダルカナルなども指揮するのである。ノモンハンの時点で作戦参謀として問題がある人物だという判断をして、ずっと作戦参謀以外の役割に就けている方がよかっただろう。そもそも、越境侵攻してはならないと本部の意向をはっきりと現地軍に言っていればノモンハン事件も起きなかったはずだ。はっきりと言わない日本的組織の空気に問題がある。

多くの人がきちんと適性のある職に就き、判断すべき立場の人が判断し責任を取り、無駄な仕事がなくなっていけば、事務系側の原価は、間違いなく大きく下がっていく。以前も書いたが、今はマイナスの生産性の働きをしている人が非常に多い。仕事の邪魔をしている役職者がどれほど多いことか。
事務系は間違いなく原価が大きく下がるが、生産現場やトラックドライバーなどに代表されるような現場側原価は、ブラック労働が是正されることで上昇していく可能性が高い。

今まで役に立たなかった管理職などの多くが適性なしと判断され、その人の適性の高い職種(例えば現場側など)に配置転換されていけば、人手不足も解消に向かうのではないだろうか。