日本の労働環境 自分たちの業界全体の価値を下げてしまう残念な事例

ときどき、自分たち自身で、自分たちの業界全体の価値を下げてしまっているのではないかと感じることがある。残念なことだけれど、珍しいことでもない。


例えば、IT業界。特に、技術者派遣の業態は顕著である。本来、一般の人よりは高いスキルを有していることで価値が生じていくはずだ。しかしながら、技術者の数を増やすことが優先され、スキルのレベルは二の次とされている。
現実に、超初心者をSEとして技術者派遣している例など珍しくもない。ある程度大きな規模の開発になると、複数の協力会社から人員をかき集め、技術者を〇〇人・△△か月常駐させるという契約になることもある。このような場合、スキルよりも人数が優先される。人数をそろえるため、二次下請け、三次下請けなど、多重下請け構造から頭数要員を集めることになる。頭数要員として、入社数日程度の新人を派遣する例も目にしたことがある。
このような状況では全体のスキルが押し下げられてしまうため、技術者の価値も低くなってしまう。IT業界自らが、技術者の価値を下げてしまっている。


次に、運送業界で目にした事例。ずいぶん昔のことだが、とある記事を読んだ。
大まかな内容としては、「往路は荷物を積んで行くが、復路に積み荷が無ければ無駄に車を走らせることになるので、安い単価でも積み荷を請けるようにしている」という感じのものだ。この記事を読んで、運送業界全体にとってマイナスになるだろうと思った。なぜならば、運送業界全体での売り上げが下がるのだから。
例えば、東京→名古屋が往路で、復路が名古屋→東京の場合。復路の運賃が、往路の7割~8割程度だったと仮定しよう。名古屋の荷主にとって、この運賃が基準となってしまう可能性がある。また、別の運送会社はこの逆の路線(往路が名古屋→東京で復路が東京→名古屋)で荷物を運び、同様の考え方で安い運賃で荷物を請けようとした場合はどうなるだろうか。
最悪の場合、荷主側の運賃の基準が下がってしまい、本来は利幅の大きかったはずの往路の運賃価格の下げ圧力が強くなってくるだろう。安易に単価を安くしてしまうと、業界全体へ波及しかねない。


ここに書いたのはごく一部の事例にすぎない。あらゆる業界で似たようなことが起きているだろう。